第3回では「未来洞察ワークショップ」当日の進行役を務めたDesignStudioの冨田直史に未来洞察手法について聞きます。
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【第3回】「Lumadaサロン―未来洞察ワークショップ」レポート
未来洞察手法とはどのようなものか
今回のワークショップで用いられた「未来洞察手法」は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の実現に向けた顧客協創やオープンイノベーションを促進するためにLumada Innovation Hub Tokyo で提供されているサービスの一つ、ビジョンデザインの中のコンテンツです。

ビジョンデザインは、未来を描くための日立のデザイン活動です。不確実性の時代と言われる今日、社会や企業が直面する課題は複雑化し、従来の延長線上で未来を考えているだけでは解決が困難になっています。そのため日立は、まず将来の社会・事業・生活に起こる変化の可能性を洞察し、それをふまえてお客さまと一緒に「ありたい姿」を描き、必要な技術やソリューションを考えるというバックキャスティングのアプローチに取り組んでいます。

そうした考え方を具体的な手法に落とし込んだものが「未来洞察手法」です。そのコンセプトについて、今回のワークショップでメイン進行役を務めたDesignStudioのファシリテーター、冨田直史に聞きました。
「私が所属するDesignStudioは、デジタルエンジニアリングビジネスユニット内にあり、ビジネスの場でデザイン手法を実践するチームです。研究所のデザインラボが開発した手法のほか一般的なデザイン手法なども取り入れアレンジしながらデザイン活動を担っています。

未来洞察手法は、5年先、10年先の未来に視点を転じ、そのときのトレンド、課題、生活者の価値観、事業のステークホルダーなどが今とどう変化しているのか、そのときにありたい姿はどのようなものかをイメージして、それに対して自分たちができること、必要な技術やサービスは何かを考える手法です」。

不確実な社会、複雑な課題に対応するためのデザインアプローチ
既存のビジネスの周辺環境などをロジカルに分析して未来を予測するフォアキャスティングも必要ですが、未来洞察手法のように、未来を起点に今を考えることで不確実な社会、複雑な課題に柔軟に対応できるよう支援するバックキャスティングの重要性が近年高まっていると冨田は話します。
「未来の予測はある程度できるかもしれませんが、実際には多くの変動要因があるため、複数のシナリオを描く必要があります。その際に有効なのが未来洞察手法で、未来を予測するというよりも、未来を探索してその本質を考えるアプローチです。不確実性を含む中でも戦略的な意思決定を行うための枠組みを提供することができ、変化の激しい時代における創造的な課題解決を支援するものであると考えています」。
未来の社会の姿や変化を探索することから、ワークショップでは参加者から実にさまざまな意見が挙げられます。それらを理解して整理し、重要なポイントを引き出し、議論を活性化するのが、冨田が務めた進行役です。また進行役の論点整理を支援する進行補佐役、ラベリングやイラストなどで複数の意見を構造化し、論点をわかりやすくする可視化支援役などのファシリテーターがワークショップを実りあるものにしています。

参加者の意見、アイデアからポイントを引き出す上で重視しているのは「意見そのものだけでなく、その意見が出てきたきっかけや、背景にある体験、考え方などに注目することです」と冨田は話します。参加者それぞれバックグラウンドが異なり、バックグラウンドが異なれば見えてくる未来も異なります。実際のワークショップでも、ファシリテーターが意見の背景を聞き出し、それを足がかりに他の人の意見を聞き、掛け合わせることで議論をふくらませていく様子が見て取れました。参加された方々からも、「アイデアや考えをうまく引き出してもらえた」といった声が聞かれました。
最後に日立のデザイン活動の特徴について聞きました。「われわれDesignStudioには、さまざまなスキルを持つデザイナーを擁しています。活動の内容に応じてコンサルタントや、日立のさまざまな事業部のソリューションエンジニア、システムエンジニアなども加わり、お客さまだけでなくその先のエンドユーザーの視点に立って考えることができるのが日立のデザイン活動の強みです。新ビジネス創出だけでなく、自社の課題発見、人財育成、システムのアップデートといった多種多様なご相談をデザインの視点から支援していますので、活用いただければ幸いです」。


第4回は、ワークショップ参加者の皆さんの感想をお届けします。