第2回では「未来洞察ワークショップ」の様子をレポートします。
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「【第2回】「Lumadaサロン―未来洞察ワークショップ」レポート」
近未来の自動車を取り巻く価値観・ニーズはどう変化しているか
今回のワークショップのテーマは、「2030年の自動車業界を例とした生成AI×製造業バリューチェーンの未来を考える」というもの。「未来洞察手法」と呼ばれるバックキャスティングの手法を用い、中長期の未来に起こる変化の可能性を洞察して、ありたい姿を描き、その実現に向けたアイデアを創出するというアプローチで議論を行います。そこで、2030年という中期の未来を舞台とし、身近で、かつ関連するビジネス領域が広いことから自動車業界を例にとったとのことです。
テーマについては参加者との事前ミーティングで共有してあり、参加者はそれぞれがテーマに沿った「PESTカード」と「ソリューションカード」を事前に作成、提出しておき当日に臨みます。

PESTカードのPESTとは、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の頭文字です。PESTカードには、その4つのマクロ要素の観点で将来の生活者の価値観・ニーズの変化と、価値観・ニーズの変化による将来(今回は2030年)の自動車業界を含めた周辺業界への影響を洞察し、記載します。また「ソリューションカード」は、今回のテーマに関連して新たなビジネスにつながりそうな技術・ソリューションを挙げたものです。例示する技術・ソリューションは、自社のものに限らず他社のものでも構いません。
ワークショップは、まずガイダンスとしてワークショップをクリエイティブにするためのグランドルールの共有と、参加者の自己紹介でスタート。以下の4つのステップで議論が進められました。

【ステップ1】価値観・ニーズの変化の洞察
議論の糸口は、参加者が事前に提出しておいたPESTカードです。ファシリテーターが、カードの内容によって生産・製造/物流・販売/アフターサービスという製造業バリューチェーンの3つの段階に分類してあります。
参加者は、まず自分のPESTカードの内容を説明、他の参加者はその投げかけをもとに価値観やニーズの変化に対する気づき、関係するステークホルダーから新たに求められるものは何かを想像し、付箋に記載します。想像、発想を言語化しやすくするため、書き方のコツなどがファシリテーターから示されます。

次に、DesignStudioの可視化支援役が、参加者が書いた付箋の内容に応じて分類しながらホワイトボードに貼っていきます。即興でイラストを描いたりしながら多様な意見を整理し、テーマごとにまとめていくことで議論を進めやすくします。そして参加者のあいだで価値観・ニーズの変化を共有したのち、次のステップへ移行しました。
未来のありたい姿を発想し、アイデア創出につなげる
ステップ1では、参加者から価値観・ニーズの変化に関するさまざまな意見が出されました。それらを元に、ステップ2の議論が進められます。

【ステップ2】将来のありたい姿の発想
まずステップ1で出された発想を振り返り、洞察した価値観・ニーズの変化を共有します。それをふまえ、変化の主体となるステークホルダーの視点でありたい姿、ステークホルダーにとって望ましい状態を発想していきます。その内容を参加者のあいだで共有し、さらに発想をふくらませながら議論が進められました。
価値観やニーズの変化から直にアイデアを創出するのではなく、「ありたい姿」というステップをはさむことで、アイデアの背景となる考え方をほかの参加者と共有でき、議論の掛け合わせが広がりやすくなる効果があるそうです。

【ステップ3】取り組みアイデアの創出
ここから将来のありたい姿の実現に向けた取り組みやアイデアを創出していきます。まずはステップ2を振り返り、可視化支援役によってまとめられたありたい姿を参加者間で共有しました。
次に、一人ずつ自分が提出したソリューションカードの内容を説明。それをふまえ、参加者それぞれが、任意のありたい姿とソリューションの掛け合わせによって創出できるサービス、仕組みなどのアイデアを出していきました。ファシリテーターからは、「大切なのは、実現性にとらわれずに、どんどん発想することです」とのアドバイスがあり、参加者からは次々とアイデアが挙げられました。
【ステップ4】アイデアへの投票
最終ステップとして、参加者それぞれが、ステップ3で出されたアイデアの中で他社と連携して取り組みたい、自社だけでは難しそうでも他社の技術・ソリューションを取り入れると実現できるかもしれない、実現してみたいと思えるものに投票を行いました。

最後にファシリテーターが本日の議論を振り返り、参加者一人ひとりが感想を述べてワークショップは終了。5時間の長丁場でしたが、密度の濃い充実した議論が行われ、参加者も手応えを感じられた様子でした。
今後、DesignStudioが中心となり、ワークショップの結果をまとめた報告書を作成、参加者への個別ヒアリングなどを経て、新たな事業機会の創出につなげていくということです。
第3回では、ワークショップで用いられた「未来洞察手法」とはどのようなものか、ファシリテーターへのインタビューを交えてお届けします。