Hitachi
お問い合わせお問い合わせ
生成AIの徹底活用を推進する日立グループの各部門の活用法をお伝えするこのシリーズ。今回は、日立製作所 デジタルシステム&サービス営業統括本部でマーケティング業務に従事する冨手俊輔が使いこなし術を紹介します。後編のテーマは、煩雑なマーケティングイベントの企画・運営業務が、生成AIによってどのように変わったのか、についてです。日立製作所でGenAIアンバサダーを務めるの大山友和が話を聞きました。

前編はこちら>

リードナーチャリングのための顧客分析

大山
前編では未来シナリオ作成など、マーケティングの上流工程における生成AIの活用法を聞きました。一方で、リード獲得のような実戦に即した業務においても生成AIは活躍しているそうですね。

画像1: リードナーチャリングのための顧客分析

冨手
はい。イベントを活用したリードナーチャリングも私の重要なタスクですが、例えばイベントに参加されたお客さまの分析に生成AIを活用しています。個人情報の取り扱いについては社内規定に基づき、十分配慮の上生成AIで取り扱いを行っています。

イベント参加顧客との絆を深めるためには、フォローアップのコンタクトにあたって、お客さまの最新情報や当社との取り引き履歴などをしっかり把握しておく必要があります。以前は1社1社丹念に公開情報や顧客データを当たりながら調査していましたが、今は生成AIが主に公開情報をまとめてくれる手助けをしてくれます。このような情報をもとに社内でナーチャリングの方向性を策定するのですが、これまでよりもフォローアップの初動が早くなっていると思います。

画像2: リードナーチャリングのための顧客分析

大山
なるほど。生成AIを使えば、データに基づいた効果的なフォローアップを迅速に実行することができるのですね。リードナーチャリング戦略に、生成AIは今後不可欠な存在になるでしょう。

画像: イベントのフォローアップに活用するために生成AIが社内外の顧客に関する情報を統合し、レポート化。

イベントのフォローアップに活用するために生成AIが社内外の顧客に関する情報を統合し、レポート化。

エグゼクティブサマリーの作成

大山
ナーチャリングの方向性が決まれば、いよいよお客さまとコンタクト、ということになりますね。

冨手
はい。その際に、顧客訪問資料が必要になるわけですが、この段階でお会いするのはご担当者よりも経営に近い立場の方であることが多く、訪問資料も推奨サービスの背景や目的、メリットが端的にわかるエグゼクティブサマリーが求められることが少なくありません。

ただ、複雑なサービスの内容を、お会いするお客さまのニーズを考慮しながら、簡潔にまとめるのは、なかなか骨の折れる作業です。そこで現在、生成AIに関連資料をもとに下書きを作ってもらい、これを叩き台にすることで作業を効率化しています。

大山
お客さまの特性に即した資料を一つひとつ作るのは、非常に時間と労力のかかる作業ですが、生成AIを活用すれば比較的容易に作成できますよね。

冨手
はい。面談のお相手の方が事前に分かっているケースもありますが、その際には、その方のプロフィール情報も生成AIに読み込ませて、パーソナルな観点でエグゼクティブサマリーを作成することもあります。

画像: エグゼクティブサマリーの下書きを生成AIが作成。ディスカッション相手のプロフィールを反映させることも。

エグゼクティブサマリーの下書きを生成AIが作成。ディスカッション相手のプロフィールを反映させることも。

さまざまなイベント関連業務での利用

大山
セミナーやイベントの運用周りには、細かな業務が多岐にわたって存在しています。他にも生成AIの登場シーンは、たくさんあるのではないですか。

画像: さまざまなイベント関連業務での利用

冨手
もちろんです。事前業務で言えば、登壇者として、イベントのテーマに沿った主張を展開している有識者を探すのに使っていますし、登壇者が決まったら今度は、その方と論点が噛み合う当社側の発表者を選ぶ際の候補者検討にも使うことを試しています。また、イベントのテーマに興味があると思われるお客さまのご招待リストを作るのにも活用しますし、イベントによってはお客さま同士でグループワークを開きますが、その際の組み合わせ案を、お客さま情報をもとに出してもらうこともあります。

事後業務としては、参加されたお客さまのリスト化はもちろん、細かいところで言えば、過去のイベントにおけるアンケートの収集実績を時間軸で分析して、次回のイベントのアンケート締め切り日を決定することなども行っています。大山さんの言う通り、イベント周りには煩雑な業務が山ほどあり、ことあるごとに生成AIを活用しているイメージです。まとめるとかなりの時間を節約できているのではないでしょうか。

大山
そのぶんの時間で顧客分析やトレンドの把握など、コア業務のクオリティを上げることに集中できますね。ひとつ気になったのが、創造的な業務の支援も生成AIの得意とするところなのですが、例えばイベントの企画立案などには使っていないのですか。

冨手
お客さまの関心をひくイベントのテーマ決めは、つねに頭を悩ませるところで、もちろん生成AIに案を出させてもいるのですが、通り一遍のものしか出てこない印象なのです。

大山
私もよく生成AIで壁打ちを行いますが、アイデアを膨らませたい時には例えば「この業界の人が興味を持つテーマを10個考えてください」というふうに、数を出させます。確かに抽象度が高い回答がほとんどかもしれません。でもその中にひとつくらいは「もしかしたら使えるかも」というものがあるのではないでしょうか。そうしたら、そのテーマについて「もっと経営層向きに考えて欲しい」とか「トランスフォーメーションの観点を入れて欲しい」など、生成AIと対話を重ねながら深掘りしていくのです。そうすれば求める答えに近づいていくのでは、と思います。

冨手
なるほど。数を出させて深掘りをしていくのですね。次はそのやり方でトライしてみます。

いま、「視覚革命」の時代

大山
この先、生成AIに期待することはありますか。

冨手
今後のAIエージェントの進展に期待しています。

例えばイベント周りの細かな業務でも、今は生成AIに質問を投げかけ、情報を受け取りながら、最終的に人間が成果物にまとめますが、これがAIエージェントの時代になれば100%任せてしまえるのかな、と思っています。また未来シナリオなども、今は生成AIとの共同作業を重ねながら作っていますが、AIエージェントなら必要な集計や分析を自律的に行い、一度で完成形として提案してくれるのではないでしょうか。

大山
マーケティングという業務の本質は、未来のトレンドや潜在的なニーズなど見えないものを見ることだと思います。そして今、私たちは生成AIによって見る力を格段に向上させることが可能です。

今から5億4,300万年前のカンブリア紀は、地球上に眼を持った動物たちが出現し、「視覚革命」が起きた時代です。そして眼を持つ動物たちは攻撃でも防御でも優位に立ち、現代まで生き延びていくわけですが、もしかしたら、今は生成AIによる「視覚革命」の時代かもしれません。ことさら今のビジネス環境はVUCA*¹といわれ、視界は不透明です。企業が継続的な競争優位性を築くためには、生成AIを高度に活用するマーケティング部門を擁していることは必須だと言えるでしょう。

*1 VUCA:Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)

画像1: 業務別!生成AI使いこなし術
【第3回】マーケティング部門編(後編)

冨手 俊輔(とみて しゅんすけ)

株式会社 日立製作所 デジタルシステム&サービス営業統括本部
Executive Strategy Unit 営業戦略企画部
主任

日立製作所に入社後、IT関連の営業部門にて、流通業、卸売業、エンターテイメント業などを幅広く担当。基幹システム構築やITインフラ環境改革などに携わる。また営業内でマーケティングとしての役割も行い、流通業向けセミナー企画や社内営業プロセス改革に従事。2018年から1年間英国(Lancaster University)へMBA留学を実施。現在は営業戦略企画部で市場を上流から捉えた戦略策定やマーケティングイベントの企画運営を行う。

画像2: 業務別!生成AI使いこなし術
【第3回】マーケティング部門編(後編)

大山 友和(おおやま ともかず)

株式会社 日立製作所 デジタルシステム&サービス営業統括本部
Executive Strategy Unit
部長代理 GenAIアンバサダー

コンサルティング部門にて、営業業務改革、新規事業の立上げなどに従事した後、日立コンサルティングにて、基幹業務システム構築などを担当。プロジェクトリーダーとして、システム企画・構築・運用全般を統括その後、営業バックオフィスを支える業務システム全般を統括。現在、営業部門の生成AI徹底活用プロジェクトの取りまとめとして、講演活動、ナレッジ蓄積、社内コミュニティ運営、人材育成などの取組みを推進中。

This article is a sponsored article by
''.