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業務の区別なく、グループ全体で生成AIの徹底活用を推進する日立。今回は営業部門が生成AIをどのように使い、どんな効果をあげているか、日立製作所の河野隆広、川本絋平、大木豪が紹介します。さらにAIファースト時代の営業の在り方についても考えを述べてもらいました。話を聞くのは、生成AI徹底活用プロジェクトで営業部門の取りまとめを務める日立製作所の大山友和です。

「前編」はこちら>

訴求力ある提案書を効率的に作成

大山
ここまで営業活動におけるお客さまへのアプローチやヒアリングといったフェーズでの生成AIの使いこなし術を聞いてきましたが、提案フェーズでは生成AIをどのように使っていますか。

河野
提案書の作成に、生成AIを駆使しています。

まず、提案書の構成を決める必要がありますが、私たちはお客さまからいただいたRFP、RFIを生成AIに取り込んで、「これに対してどういう構成で提案するべきか」を生成AIに問いかけます。すると生成AIが、すぐに構成案を出してくれるので、これを叩き台にSEも含めたチームで構成を詰めていきます。

画像1: 訴求力ある提案書を効率的に作成

大山
提案書に訴求力を持たせるためには構成が極めて重要ですが、この工程を生成AIで効率化しながらクオリティを高めているのですね。

画像2: 訴求力ある提案書を効率的に作成

河野
はい。叩き台とはいえ、人力でお客さまの要望と擦り合わせながら構成を組むのは時間がかかる作業です。でもいまは叩き台が上がるのを待つ時間がなくなり、すぐにチームで議論を開始できます。

構成が決まると具体的な提案内容の作成になりますが、その時、過去の提案書が大変参考になります。以前はキーワードをいろいろと試しながら過去のデータを検索していましたが、生成AIを使えば、キーワードが一致しなくても文脈を判断して類似のテーマのものを瞬時に探し出してきてくれます。

また、過去にない新しい提案が必要な時にはチームでブレインストーミングを行いますが、その時には生成AIでアイデアの壁打ちを行います。生成AIの回答が、みんなの議論を活発化させる呼び水となってくれるのです。

そして内容がまとまったら、提案書を生成AIによる自動評価にかけます。お客さまの要望に沿っているか、展開に違和感はないか、デザインは適切か、などについて改善点を提示してもらいますが、中には予想外の指摘もあり、そうしたものを参考にブラッシュアップを重ねて提案書は完成となります。

生成AIを活用すれば提案書作成の煩雑な作業を簡素化できます。そして、そのぶんの時間を使って内容の完成度を高められるわけですから、提案の質の向上にも確実につながっていると思います。

大山
良い提案書が完成したら、プレゼンテーションも説得力あるものにしたいですよね。以前にも紹介しましたが、Teamsでリハーサルを行って生成AIから話し方などの評価を受けたり、提案書に対する想定Q&Aを生成AIで作成してチームで共有したりするなど、プレゼンテーションの質を高めるための使い方もいろいろあります。

2社の契約書の相違点の洗い出し

大山
さて、提案に納得いただけたら契約ということになりますね。

河野
契約のフェーズにおいても生成AIは欠かせません。

契約内容の合意のためには、お客さまから頂戴した契約書のひな型と日立側の契約書のひな形を突き合わせて、考え方の相違点を洗い出す必要があります。以前は、両社の分厚い契約書の条項をひとつずつ、お客さまはこう言っている、日立はこう言っている、と確認する作業を行っていましたが、生成AIなら相違点を即時に抽出してくれます。

契約が締結し、システムが動き出した後のフォローアップでも、部署で共有されている報告書から「最も多く報告される課題」や「お客さまの不満点」を生成AIで定期的に分析し、チームで共有することで先手のコミュニケーションに生かしています。

大山
営業活動の全般を通して、資料の収集など煩雑な作業の自動化、新しいアイデアの創出など創造的な業務のサポート、目的達成に向けた客観的な分析や評価など、生成AIの利点を最大限活用していると感じました。

営業活動レポートの自動生成による連携力の強化

大山
河野さんたちも随所でチームとして生成AIを使っていましたが、営業チームが連携力を高めるためにおすすめしたい使いこなし術が、営業活動レポートの自動生成です。

忙しい営業担当者から敬遠されがちな活動レポートですが、生成AIなら自動作成が可能ですので、リアルタイムに近い形での活動状況の共有が可能になります。これによりチームによる先手の課題対応などが実現し、お客さまとの絆づくりにも寄与するのではないでしょうか。

画像: 生成AIによる営業活動レポートの自動作成により、リアルタイムに近い形での情報共有が可能。

生成AIによる営業活動レポートの自動作成により、リアルタイムに近い形での情報共有が可能。

河野
営業活動レポートに基づいて、アクションに問題はないかなど、生成AIからコーチングを受けることも可能かもしれませんし、将来的には、生成AIが年間の活動レポートをもとにスキル分析を行い、学習計画なども作成してくれるかもしれません。

画像: 日々のパフォーマンスの分析に基づくパーソナルな行動提案を生成AIから受けることも可能。

日々のパフォーマンスの分析に基づくパーソナルな行動提案を生成AIから受けることも可能。

プライベートでの英語学習

河野
いまや仕事だけでなく、プライベートでも生成AIがなくてはならない存在になりつつあります。私は洋画や洋楽の鑑賞が趣味なのですが、せっかくなら英語学習に生かそうと、例えば映画を見ながらネイティブ特有のセリフを和訳してもらったり、あるいは音楽を聴きながら詩的な英語表現を生成AIに英英翻訳してもらったりしています。好きなコンテンツをそのまま教材にできるので、学習効果は高いのでは、と感じています。

大山
なるほど。工夫次第で生成AIは優れた学習支援ツールになりますね。他にも、気に入った英語の言い回しがあれば、シチュエーションを指定して生成AIに例文を作ってもらったり、自分でその言い回しを使って英文を書いてみて生成AIに文法チェックをしてもらったり、それこそ生成AIを相手に英会話を実践してみたり、使い方はいろいろありそうです。

画像: 生成AIを活用することでプライベートでの英語学習も、いっそう充実。

生成AIを活用することでプライベートでの英語学習も、いっそう充実。

「AIファースト」の時代の営業とは

大山
近い将来、AIを最優先に据えて業務にアプローチする「AIファースト」の時代が来ると思います。その時、営業に求められるスキルが今とは変わってくるのではないかと思いますが、皆さんいかがでしょうか。

画像1: 「AIファースト」の時代の営業とは

川本
生成AIは営業活動の多くを自動化できる可能性を持っていますが、ただのツールに過ぎないことも忘れてはいけないと思います。生成AIの指示に従うだけでは、すべての営業が同じになってしまいます。その中でお客さまに刺さる活動をするためには、やはり課題を発見する洞察力が大事ではないでしょうか。お客さまの複雑な状況を理解して隠れたニーズを見出し、それを起点にして生成AIを最大限活用しながら迅速に最適な提案を行う。それが、これからの営業のスタイルではないかなと思います。

画像2: 「AIファースト」の時代の営業とは

大木
私は、これから生成AIのエージェント化が進み、バックヤードにおける繰り返しが多い作業の自動化はもちろんのこと、フロントの一人ひとりを支援するさまざまな分析なども可能になるのでは、と大変期待しています。ただ、そのためには、情報をどのように集め、整理し、保管するかが課題になるでしょう。そうした観点でこれまでのやり方にとらわれずに、AIファーストで業務を見直していくことが重要になってくると思います。

河野
営業活動の本質はお客さまとの信頼関係の構築で、それはAIファーストの時代になっても変わらないと思います。生成AIはお客さまの課題に対して客観的な観点から解決策を提示しますが、お客さまが持つ背景や価値観などを考慮しながら、お客さまの立場でものを考えることはまだまだ不得意だと思っています。

生成AIにより業務の効率化を進めて訪問機会を増やし、お客さまのことをできるだけ深く理解する。そして生成AIによりチームで連携して、核心を突く提案をタイムリーに行う。そうすることで、お客さまの信頼により高いレベルで応え続けていきたいと思います。

画像1: 業務別!生成AI使いこなし術
【第1回】営業部門編(後編)

河野 隆広(こうの たかひろ)

株式会社 日立製作所 金融システム営業統括本部
金融営業第二本部 第一部
主任

2012年、日立製作所入社。入社以来、金融システム営業統括本部において、複数の金融機関向けにITシステムやソリューションを提案する営業業務に従事。ミッションクリティカルな基幹系システムを中心にネットワークやOA領域など幅広く担当。多岐にわたる新規案件の立ち上げや提案をリードしている。

画像2: 業務別!生成AI使いこなし術
【第1回】営業部門編(後編)

川本 絋平(かわもと こうへい)

株式会社 日立製作所 金融システム営業統括本部
金融営業第二本部 第一部

地方銀行において法人向けの融資・運用商品の販売・ソリューション営業を経験した後、日立製作所に入社。現在、金融システム営業統括本部において複数の金融機関を担当し、ITシステムやソリューションを提案するシステム営業に従事。新規案件の発掘や顧客内新領域開拓を中心とした営業活動を行っている。

画像3: 業務別!生成AI使いこなし術
【第1回】営業部門編(後編)

大木 豪(おおき ごう)

株式会社 日立製作所 金融システム営業統括本部
金融営業第二本部 第二部
主任

グループ会社でシステム設計、プログラム開発を経験した後、日立製作所 金融システム営業統括本部へ転属。メガバンクを担当する部署において、営業担当者の事務作業をサポートするバックオフィス業務に従事。営業チーム全体の業務効率化を推進している。

画像4: 業務別!生成AI使いこなし術
【第1回】営業部門編(後編)

大山 友和(おおやま ともかず)

日立製作所 デジタルシステム&サービス営業統括本部
Executive Strategy Unit
部長代理

コンサルティング部門にて、営業業務改革、新規事業の立上げなどに従事した後、日立コンサルティングにて、基幹業務システム構築などを担当。プロジェクトリーダーとして、システム企画・構築・運用全般を統括その後、営業バックオフィスを支える業務システム全般を統括。現在、営業部門の生成AI徹底活用プロジェクトの取りまとめとして、講演活動、ナレッジ蓄積、社内コミュニティ運営、人材育成などの取組みを推進中。

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