生成AIで業務の初動が全て変わった
大山
私は、日立グループの生成AI徹底活用プロジェクトにおいて営業部門の取りまとめをしていますが、今日は日立製作所 営業部門の河野さん、川本さん、大木さんから日々の生成AIの使いこなし術を聞いていきたいと思います。3人は金融システム営業統括本部に所属しており、自部署で生成AIの活用を促進するワーキンググループを立ち上げ、そこでも積極的に活動しています。
そして事前に3人には、営業部門における1日の生成AIの利用イメージをまとめてもらっていますが、生成AI活用前と後では営業活動全体を俯瞰して、どんな変化がありましたか。
河野
いま私たちの部署では、Microsoft の生成AIである「Microsoft Copilot」と、社外秘情報も扱えるようセキュリティが確保された日立の生成AI「Effibot」の2つの生成AIを適材適所で使える環境を整えていますが、以前とは、ほぼ全ての業務の初動が変わったと思います。
大山
なるほど。初動が変わったというのは、例えばどんな業務でしょうか。そしてどのようなメリットが得られたのか、聞かせてください。
河野
はい。例えば、訪問前の下調べ、提案資料の検討、見積もりの作成、もっと細かなところだと、メールを書くことなど、多岐にわたる業務で自分が手を動かす前に1回、生成AIに考えてもらっています。業務の最初の数段階をショートカットするためのジャンプ台のようなイメージです。もちろん生成AIが出力したものはしっかり精査する必要がありますが、実感として作業時間の短縮と最終的なアウトプットの品質向上を両立できていると思います。
大山
川本さん、大木さんは、生成AI活用のメリットをどのようなところで感じていますか。
川本
私が生成AIを使い始めて、まず衝撃だったのが自動生成された議事録のクオリティの高さです。生成AIを使う以前の会議では、議事録のためのメモ書きに集中してしまい、議題についての思考が疎かになってしまうことが度々ありました。でも今は、議事録作成は生成AIに任せられるので、会議にしっかり集中できるようになっています。議事録作成に限らず、生成AIはいろいろなシーンで煩雑な作業から自分を解放してくれて業務への集中を促してくれていると思います。
大木
部署における私のタスクは、他の営業担当者が活動に集中するための事務作業の巻き取りなのですが、避けなければならないのは作業漏れです。生成AIを活用する前は、大量のメールやTeamsのトピックの中に見落としている依頼がないか、つねに時間をかけて確認していましたが、現在は生成AIが未読メールやメンションされたトピックをリスト化してくれるので助かっています。こうした生成AIによる効率化は業務の中に無数にあり、まとめるとかなりの分量になるのではないでしょうか。
1日の活動計画の生成
大山
ここから、事前にまとめてもらった生成AIの利用イメージに基づいて、代表して河野さんに使いこなし術を聞いていきたいと思います。
さて、1日のスタートに生成AIはなくてはならないようですね。
河野
はい。生成AIにその日の活動計画を生成してもらうことをルーティーンにしています。厳密には前日の業務の最後に行うことが多いのですが、スケジューラーやタスク管理の情報をもとに、生成AIに1日の活動計画を立ててもらいます。「9:00:社内会議。10:00:タスクAを処理。11:45:ランチ休憩。12:45:○○銀行様本店へ向けて会社を出発。13:30:○○銀行様と新システムについて会議」という感じです。タスクの優先度なども加味しながら、その日にやるべきことをひと目でわかるよう整理してくれるので、訪問先が多くデスクワークも溜まっている日でもスムーズに活動できます。
大山
生成された計画を見て、「想像していたよりも今日は大変かも」などと気づくこともありますよね。でも、最初に忙しいことが分かってますから事前にサポートを頼むこともできます。
お客さまのプロファイリング
大山
さて、いよいよ営業活動開始です。まずはお客さまの訪問準備ですね。
河野
はい。例えば初めてお客さまに接する際にはプロファイリングが大切になりますが、私たちはお客さまの特性を推し量るのに必要な社内外に分散した情報の集約と分析を生成AIで行っています。過去の取引実績や主要な意思決定者、当社製品に対する満足度、そして最近のニュースリリースやIR情報、中期経営計画などから将来の成長機会や潜在的なニーズを考察し、プロファイリングデータとしてまとめてくれますが、これは人間だとひと仕事です。
大山
それに生成AIは、そのプロファイリングに対して自社がどのような対応をとるべきか、示唆などもしてくれますね。
河野
そうですね。プロファイリングにはお客さまの中期経営計画なども取り込んでいますから、当社の強み分野と照らし合わせて年度ごとの営業活動方針なども示唆してくれます。こうした情報をインプットしてアプローチに臨むか、インプットしないで臨むか、で大きな差が出ると思います。
質疑応答時のリアルタイムのサポート
大山
実際にお客さまにお会いしてのヒアリングでは、生成AIを活用しますか。
河野
はい。生成AIを立ち上げてヒアリングに臨むことが多いです。ヒアリングでは、会話の質を高めてお客さまの課題を掘り下げることが大切です。お客さまから質問を受けたら迅速かつ的確にお答えしなければなりませんが、想定外の質問はなくせませんし、中には即答が難しいケースもあります。営業が全ての製品、サービスに精通しているわけではありませんから。
でも生成AIがあれば、例えば「当社のAIソリューションのセキュリティについて他社と比較した強みを3点挙げること」などとプロンプトを打つだけで瞬時に回答を表示してくれます。
大山
自分で検索していたら間が空いてしまいますし、答えられなければ、もしかしたら「持ち帰り」となって工程がひとつ増えてしまうかもしれません。生成AIは、なんでも知っている心強いアシスタントですね。
河野
こうした初期のコミュニケーションがスムーズにいけば、RFP、RFIをいただき、いよいよ提案ということになります。
大山
次回は、提案フェーズでの生成AIの使いこなし術から聞いていきたいと思います。
河野 隆広(こうの たかひろ)
株式会社 日立製作所 金融システム営業統括本部
金融営業第二本部 第一部
主任
2012年、日立製作所入社。入社以来、金融システム営業統括本部において、複数の金融機関向けにITシステムやソリューションを提案する営業業務に従事。ミッションクリティカルな基幹系システムを中心にネットワークやOA領域など幅広く担当。多岐にわたる新規案件の立ち上げや提案をリードしている。
川本 絋平(かわもと こうへい)
株式会社 日立製作所 金融システム営業統括本部
金融営業第二本部 第一部
地方銀行において法人向けの融資・運用商品の販売・ソリューション営業を経験した後、日立製作所に入社。現在、金融システム営業統括本部において複数の金融機関を担当し、ITシステムやソリューションを提案するシステム営業に従事。新規案件の発掘や顧客内新領域開拓を中心とした営業活動を行っている。
大木 豪(おおき ごう)
株式会社 日立製作所 金融システム営業統括本部
金融営業第二本部 第二部
主任
グループ会社でシステム設計、プログラム開発を経験した後、日立製作所 金融システム営業統括本部へ転属。メガバンクを担当する部署において、営業担当者の事務作業をサポートするバックオフィス業務に従事。営業チーム全体の業務効率化を推進している。
大山 友和(おおやま ともかず)
日立製作所 デジタルシステム&サービス営業統括本部
Executive Strategy Unit
部長代理
コンサルティング部門にて、営業業務改革、新規事業の立上げなどに従事した後、日立コンサルティングにて、基幹業務システム構築などを担当。プロジェクトリーダーとして、システム企画・構築・運用全般を統括その後、営業バックオフィスを支える業務システム全般を統括。現在、営業部門の生成AI徹底活用プロジェクトの取りまとめとして、講演活動、ナレッジ蓄積、社内コミュニティ運営、人材育成などの取組みを推進中。