先進のデジタル技術とリテールの知見を結ぶコラボレーション
吉田(日立)
日立製作所の吉田と申します。本日は電通デジタルの大木さんとともに「生成AIで変わる小売の未来」というテーマでお話ししたいと思います。最初に電通デジタルと日立との関係について簡単に説明します。日立はLumadaというデジタル事業を推進しており、各種のデジタル技術を開発・活用しています。そのなかで、リテールやマーケティングといった領域に関しては専門家である電通デジタルとコラボレーションし取り組んでいるところです。
大木(電通デジタル)
こうして連携できることに感謝しています。私たち電通デジタルは電通グループにおいてクリエイティビティとテクノロジーを活用する総合デジタルファームの位置づけです。広告のイメージも強いと思いますが、私の所属するトランスフォーメーション部門ではクライアント企業とともに社会や生活者を見据えながら事業変革や組織の課題解決を支援しています。
日立とは2年ほど前からコラボレーションを進めており、戦略立案や顧客体験の設計などプロジェクトの最初のフェーズを当社が支援しています。そしてその構想を支えるシステムや技術の導入フェーズで日立にバトンタッチをするといった連携を、鉄道や地銀といったさまざまな業界のクライアント企業の事例を通じて複数展開しているところです。
「人手不足」に立ち向かう生成AIのアプローチ
吉田
まず、日立の取り組みから簡単にご説明します。小売業に限らず多くの業界で深刻化している人手不足の問題に対して、日立は生成AI活用で少人数でも業務に対応できる仕組みづくりを考えています。まずは日立グループの約27万人の従業員が生成AIを実際に使ってお客さまにとって有益な活用法を模索しながら、そこで得られたナレッジを蓄積し、お客さまのビジネスに適用していこうと取り組んでいるところです。
サービスの提供形態としては、お客さまのニーズに合わせて、クラウド環境なら「Microsoft Azure」や「Amazon Bedrock」、「Google Cloud」に対応しており、一方オンプレミス環境としては、生成AI活用に必要なGPUを供給するNVIDIA社と連携しながら生成AI用のサーバーも提供しています。
そのうえで、コンサルティングサービスとしてお客さま企業やパートナー企業とのコラボレーションを通じたユースケースをつくっている状況です。例えば、コールセンターやコンタクトセンターで働くオペレーター要員の確保が難しいなかで、生成AIによる問い合わせ回答支援など少人数でも対応できる方法を提案しているほか、生成AIを活用した工場設備の保守員や営業員、店舗スタッフの支援なども現在検討しています。
生成AIで広告戦略のすべての業務工程への関与をめざす
大木
生成AIの業務活用に関する日立の取り組みはとても多彩で大変印象深いですね。一方、当社では「∞AI」というAIを活用したマーケティングソリューションブランドのもと、生活者の体験をどう行動化していくかという観点から、広告に関する生成AIの各種自動生成などに取り組んでいます。ポイントは、単に画像やテキスト自動生成するだけでなく、効果予測・改善までをも含めた工程に生成AIを関与させている点です。
最近のニュースでは電通と電通デジタルは電通のコピーライターが長年培ってきた思考プロセスを人工知能(AI)に学習させた広告コピー生成ツール「AICO2」を発表しました。例えばラジオ広告などの制作費低減にも役立つものと考えられます。
また、「対話型AI」についてもさまざまな試みを推進中です。例えば、不動産や金融商品など、もともと対面でクロージングを図る機会が多く、ある程度説明が必要な商材には対話型AIはなじみやすいと私は考えています。もちろん一般流通や店舗販売商品に対するAI活用に関してもさまざまな試みがされている状況です。
その一例として、「Owned Human(オウンドヒューマン)」というバーチャルヒューマンがお客さまと直接対話するだけでなく、商品の説明をする際はバーチャルヒューマンが小さくなって商品がクローズアップされ、色を変えたり、中を開けてみたりなど、商品をつぶさに見せられる――そんなAIとのコミュニケーションにも挑戦し始めています。
そしてもう1つのテーマが「パーソナライゼーション」です。例えばゴルフダイジェスト・オンラインでは、「ゴルフ場を予約して、ゴルフ用品をオンラインショップでバーチャル試着や購入し、予約日にプレーする」といった一連の流れに対して、店員さんAIが買い物など一連の体験に寄り添うことで、購買額の向上をめざしています。
吉田
このサービスはもう実用化しているんですか?
大木
現在、デモ版を開発・PoC中となっています。
吉田
ということは、ゴルフをやる方なら今後このサービスを利用されるかもしれませんね。
「【後編】多種多様なデータから顧客をより深く理解する」はこちら>
大木 真吾 氏
株式会社電通デジタル
トランスフォーメーション部門
ディレクター
2005年に31歳で大手広告グループに参加。データマーケティングやCRM領域の戦略策定・施策立案・分析支援などを担当。エグゼクティブデータマーケティングディレクターとして100を優に超える多彩なプロジェクトをけん引・参加してきた。2022年より電通デジタルに移籍。
吉田 順
株式会社日立製作所
デジタルエンジニアリングビジネスユニット
Data&Design 本部長 兼 Generative AI センター センター長
1998年、日立製作所入社。銀行・保険、流通・小売、製造業、鉄道などさまざまな業種の顧客に対し、多数のAI/ビッグデータ利活用プロジェクトを推進。社内外のデータサイエンティスト育成にも関わる。データ分析のトップ人財を結集したLumada Data Science Lab.の共同リーダー。2023年5月に設置されたGenerative AIセンターのセンター長を務めるほか、2023年12月からは、日立におけるAIを活用したトランスフォーメーションの推進責任者としてデジタルシステム&サービスセクター のChief AI Transformation Officerに就任。
他社登録商標
・Microsoft、Azureは、マイクロソフト 企業グループの商標です。
・Google Cloudは Google LLC の商標です。
・Amazon Bedrockは、米国その他の諸国における、Amazon.com, Inc.またはその関連会社の商標です。
・その他、本記事に記載の会社名、商品名、製品名は、それぞれの会社の商標または登録商標です。