Hitachi
お問い合わせお問い合わせ
Wow!を生み出すギーク集団、TeamQは、現場のDXを推進する際の課題の抽出や運用の検証を加速するために、さまざまな技術を組み合わせたプロトタイプを制作しています。そうした現場環境プロトタイピングは、DXにどのような価値をもたらすのか、そしてどのような社会課題の解決に寄与するのか。日立製作所 デジタルエンジニアリングビジネスユニット Data & Designの野宮正嗣に話を聞きました。

「前編」はこちら>

DXのゴールイメージを共有するための3要素

——野宮さんはプロトタイピングの匠でありながら、データ活用のエキスパートだと聞いています。

野宮
私の主業は、データデザインという分野になります。データデザインとは、お客さまがビジョンを達成するための課題の構造を整理し、それぞれの課題を解決するためにどういったデータをどのように掛け合わせたらよいのか、データ活用のアプローチを設計する仕事です。

画像1: DXのゴールイメージを共有するための3要素

——野宮さんが、プロトタイピングも手掛けるようになったきっかけは何だったのでしょうか。

野宮
7年ほど前、大手流通系の店舗業務を改善するためのプロジェクトが、流通業、製造業、物流業、そして日立といった多くの企業が協創する形で立ち上がり、私はそこでデータデザインに携わりました。

日立は、整理された課題に基づいて新システムのファンクション(機能)とコンテクスト(価値創出のシナリオ)をまとめ、ゴールに向けてパートナーと議論を進めましたが、私はより効率的に合意形成を図る手法を模索していました。というのは、各ステークホルダーは同じ情報を共有しているようでもそれぞれ背景が異なるため、ゴールイメージにズレがあるように感じていたからです。

私は、ファンクションとコンテクストの他に、リアリティが足りないのでは、と仮説を立てました。つまりゴールイメージをなぞらえた、形があるものがあれば理解のズレを解消できるはずだと考え、早速、1/10の店舗の模型を紙で作りました。すると期待通りに合意形成は円滑化し、以降、プロジェクトでは模型は必須アイテムとなり、段階的に実物のプロトタイプへと成長し、最終的には実店舗での稼働となりました。このプロジェクトの成功から、私は現場のDXに携わる際には、基本的にプロトタイピングを使った提案を行うようにしています。

——DXでは、ファンクション、コンテクスト、リアリティが揃ってゴールイメージを共有できるのですね。

野宮
DXは、システムの機能や提供価値の検証を中心に進みがちですが、そこにリアリティ、言い換えれば現場視点の実現性が伴っていないと思わぬ手戻りが発生しプロジェクトが停滞してしまいます。円滑なDXの推進のために、特に現場の変革においてプロトタイピングは威力を発揮します。

画像2: DXのゴールイメージを共有するための3要素

イノベーションの実装を加速する

——データデザインとプロトタイピングは現場DXの両輪なのですね。

野宮
データデザインにおいては、お客さまの課題をより具体化させながら構造整理することが重要です。しかし、この課題の抽出は難易度が高く、ヒアリングだけではお客さまの話は抽象的になりがちで、こちらの理解が追い付かないことも少なくありません。

一方、現場環境のプロトタイプがあると、いま、ここに、こういう悩みがある、と誰もがイメージを共有できる形で課題を具体化することができ、データデザインを迅速かつ高精度に進めることができます。

試行錯誤を迅速かつ高精度に行うことができれば、それは大きな強みであり、私はそのために、さまざまなテクノロジーを組み合わせたプロトタイプを開発しています。

3Dプリンターによる現場環境の縮小モデルで、現在の業務フローを効率的に構造化する。そこにプロジェクションマッピングなどを重ね合わせ、課題の発見を促進する。さらに解決策を落とし込んだ現場環境をメタバースに構築し、オペレーションの仮説・検証を繰り返す。これにより、社会への実装を加速することができると考えています。

画像: イノベーションの実装を加速する

フロントラインワーカーが主役

野宮
労働人口が減少する中、数多くの現場DXプロジェクトが立ち上がっています。そのプロジェクトの主役は、言うまでもなく現場で働く従業員——フロントラインワーカーです。しかし、課題を抽出する時、運用の実現性を検証する時、会議室のモニターに図面やデータを映すだけに留まっていないでしょうか。

現場のDXの成功は、どれだけ現場の声を深く聞くことができるかにかかっています。そのためには、現場のフロントラインワーカーが直感的に理解でき、自分事として会議に没頭できるコンテンツが必要だと思います。それが現場環境のプロトタイプです。

——フロントラインワーカーの皆さんがWow!と、前のめりに会議に参加できることが、現場のDXでは大事なのですね。

野宮
これまでさまざまなスタイルのプロトタイプを開発してきましたが、まだまだその可能性は広がると考えています。

TeamQのメンバーは「Wow!を生み出すギーク集団」というコンセプトに違わず、それぞれが、デジタルヒューマンに使われているような生成AI、UI/UXデザイン、IoTセンサを活用したプロトタイプおよびモバイルアプリとメタバース技術などの得意技術を持ち、しかも強みを持つドメインナレッジもさまざまです。こうした知見を融合して、これからもプロトタイプのリアリティを高め続け、さまざまな業界の現場のDXに貢献していきたいと考えています。

画像: - YouTube www.youtube.com

- YouTube

www.youtube.com
画像: Wow!を生み出すギーク集団、TeamQとは
【第3回】協創DXための現場環境プロトタイピング(後編)

野宮正嗣(のみや まさつぐ)

株式会社日立製作所 デジタルエンジニアリングビジネスユニット
デジタル事業開発統括本部 Data & Design Data Studio
技師

2003年、日立製作所入社。生体認証ATM、ICキャッシュカードなど金融分野での事業開発を経験した後、多業種/異業種協創による事業開発プロジェクトにおいて、AI、ビッグデータを活用した課題解決に携わる。2022年よりTeamQのメンバーとして、プロトタイピングを活用した現場のDXの推進支援に従事。データサイエンティスト、デザインシンキングの知見も生かしながら、物流、運輸、エネルギーなどさまざまな現場の課題を解決に導いている。

関連サイト

This article is a sponsored article by
''.