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日立にTeamQという組織図には載っていない部署横断のギーク集団が存在します。彼らのタスクは、新しい技術を使ってワクワク感や期待感、つまりWow!を生み出すプロトタイプを開発すること。後編では、どのような方法でWow!を生み出すのか、そもそもWow!の本質とは何なのか、TeamQをさらに深掘りします。話を聞いたのは、TeamQを取りまとめる日立製作所 デジタルエンジニアリングビジネスユニット Data & Designの玉山尚太朗です。

「【第1回】技術がもたらすまだ見ぬ価値を体験可能に(前編)」はこちら>

フォアキャスティングとバックキャスティング

——TeamQはなぜ、お客さまの課題を起点にするのではなく、技術を起点にしたアプローチを採っているのでしょうか。

玉山
課題起点のアプローチは、目の前の壁を乗り越えるには有効です。このアプローチを続けることによって、解決策が積み重ねられ、ビジネスは改善されていきます。これは、言い換えればフォアキャスティング的なビジネスの進め方で、企業の未来は現在の延長線上に築かれます。

一方、技術起点のアプローチは、バックキャスティング的と言ってもいいかもしれません。TeamQは、新しい技術を起点にビジネスの望ましい将来像を描き出し、プロトタイプを開発します。だから、目前の課題は解決できないかもしれませんが、お客さまに現在の延長線上にはない新しい未来を提示することができます。しかも、私たちが提示する未来は実際にある技術をベースにしていて、ビジネスとしての現実的な効果も見込んでいます。

日立の本流は、お客さまの課題を起点に解決策を提案するアプローチですが、TeamQの技術起点によるWow!な提案もケースによっては有効です。日立として両方をお客さまに提案できることは、強みだと思います。

——確かに。お客さまは2つの未来が見られる方がうれしいですね。

玉山
TeamQの提案は、ズバリ100点でなくてもいいと思っています。

お客さまは必ず興味津々で私たちのデモを体験してくださいます。その時、これが自分の業務に適用されたら面白いかも、と想像してWow!が生まれる。そのお客さまがオフィスに戻って同僚の方に、「日立が面白いこと考えててさ」と話してWow!が広がる。それによって、デモ自体は仮に時期尚早という評価だったとしても、「でも、その技術でこんなことできませんか」と協創のきっかけになることもあります。もちろんTeamQの提案がそのまま社会に実装されるのがベストですが、ファーストステップとして日立のより挑戦的、刺激的な側面を見てもらうだけでも意味があると考えています。

画像: フォアキャスティングとバックキャスティング

「FIND」「MAKE」「IMPRESS」の3つフェーズ

——Wow!を生み出すプロトタイプはどのようにして生み出されるのでしょうか。

玉山
TeamQのプロトタイピングのフローは、「FIND」「MAKE」「IMPRESS」の3つフェーズで構成されています。

まず「FIND」は、新しい技術の目利きを行うフェーズです。世の中に登場するデジタル技術についてその特性や潜在能力などを調べ、社会に新しい価値をもたらす技術をピックアップし、世の中がワクワクするような、つまりWow!な使い方を考察します。

次の「MAKE」は、プロトタイプの試作、応用のフェーズです。「FIND」で考察した新しい価値を実際に体験できるようデモを開発します。例えば生成AIの開発や3Dモデルの作成、UI/UXの設計などを進め、それらをプロトタイプに実装します。

最後の「IMPRESS」は、体験型デモを実施するフェーズです。「MAKE」で制作した新しい技術を実装したプロトタイプを使って、お客さまにWow!な体験を提供します。

——お客さまに体験いただくことがゴールなのですね。

実体験の場を用意することはTeamQが大切にしていることです。私たちが扱うのは新しい技術ですので実際に体験した方が理解は早いですし、価値の検証も、課題の抽出も、意思決定も、プロトタイプに触れながらの方が迅速かつ高い精度で行えます。

何よりWow!なアイデアをお客さまに伝えるためには、プロトタイプを体験いただくことが最善なのです。

画像: 「FIND」「MAKE」「IMPRESS」の3つフェーズ

まだ見えていない課題

——やはりTeamQのキーワードはWow!なのですね。でも、そのアイデアがWow!かどうかの判断は、難しそうです。

玉山
そこはあまりメンバーと話したことはないのですが、ただTeamQのミーティングではエンターテインメントを追求しただけのアイデアは出てきません。やはり「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」という日立のミッションは、メンバーの頭から離れることはなく、技術起点とは言いつつ、やはり私たちがめざすのは社会課題の解決なのです。

ただ解決する課題は目の前にある課題ではなくて、まだ見えていない課題なのかもしれません。

新しい技術が登場すると、これまで当たり前だと思っていた常識が変わります。例えば、「機器は操作するもので人とは会話できない」がこれまでの常識でしたが、生成AIの登場によって「機器は人と会話できる」可能性が出てきました。この変化によってこれまで当たり前だった、例えば、モノの使い方を調べるために取り扱い説明書を読むといった行為は、もしかしたら不便なことかもしれないと気が付きます。そうしたまだ見えていない課題にヒットしているかどうかが、Wow!に関係しているかもしれません。

——なるほど。課題を先取りしたまだ見ぬ便利を提示するから、驚きがあるのですね。

玉山
私たちは、TeamQを「Wow!を生み出すギーク集団」と定義付けていますが、メンバーはただ人より知識があるだけの技術マニアではないと思っています。彼らは、社会や産業にどんな課題が隠れているのか、つねにアンテナを張っています。そして技術探索をしている時に、「ここに使える!」とビットが立つ。それがアイデアの種になるのかもしれません。そしてTeamQのメンバーは多様なバックボーンを持っています。みんなが集まるとアイデアの種はさまざまな知見と結合して、ひとつのWow!に実を結んでいくのだと思います。

TeamQは、新しい技術が創り出す望ましい未来を考え続けています。それはきっと企業の将来構想をクリアにするお手伝いや新しい商品、新しいビジネスの開発支援につながると思っています。お客さまと一緒に、社会に向けてWow!を生み出せたらうれしいですね。

画像: TeamQとは?:日立製作所のデジタル部門に所属するWowを生み出すGeek集団を追え! youtu.be

TeamQとは?:日立製作所のデジタル部門に所属するWowを生み出すGeek集団を追え!

youtu.be
画像: Wow!を生み出すギーク集団、TeamQとは
【第1回】技術がもたらすまだ見ぬ価値を体験可能に(後編)

玉山 尚太朗(たまやま しょうたろう)

株式会社日立製作所 デジタルエンジニアリングビジネスユニット
デジタル事業開発統括本部 Data & Design Design Studio
Lead Creative Technologist

1996年、日立製作所入社。鉄道などの公共サービス、情報機器や医療機器などのプロフェッショナル向け製品のヒューマンインタフェースデザインを担当。2018年から、先行的なインタラクション研究に従事。2022年に、JEITA HID専門委員会の委員長として、AIとインタラクションをテーマに活動を牽引。2023年、Design Studio の Lead Creative Technologist として、デジタルサービスのUX/UIデザインやデジタルプロトタイピングをリードしている。

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