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デジタルデータで構築されたリアルな3次元空間を自由に探求=クエストしながら、建物の細部やイメージをチェックし、建設プロジェクトの承認プロセスを一つひとつクリアしていく――。従来の課題を解決し、建設業の業務スタイル変革を加速させる、そんな革新的なメタバースの開発が現在進行中です。生産性向上や働き方改革を支援するその意欲的なチャレンジを2回にわたって紹介します。

円滑な合意形成と建設承認を妨げていたアナログ的な業務手法

建設業界に対しては5年間猶予されていた「働き方改革関連法」が適用される“2024年問題”。その対応策の一環として、大成建設株式会社(以下、大成建設)では近年、「生産プロセスのDX化」を推進してきました。一方で、生産性向上や多様で柔軟な働き方を阻害していたのが、建設業界の旧来の仕事のやり方でした。建設業界では紙の図面や現場での目視確認などが現在も主流で、こうしたアナログ的な業務手法は業務効率を低下させ、長時間労働の一因となっていたのです。

画像1: 大成建設株式会社「建設承認メタバース」開発プロジェクト
第1回 建設現場のDXで円滑な合意形成を支援

大成建設株式会社
建築本部
プロジェクト・マネジメント部
電力施設計画室長
池田 浩也 氏

一般に専門家ではない施主が平面図だけで建物の完成形をイメージすることや、3次元の立面図でも空間を体感するのは難しく、図面だけで建設承認を得るのは容易ではありません。建築本部 プロジェクト・マネジメント部の池田 浩也氏は、「通常の平面図の場合、照明やダクトといった設備には高さの情報が記載されていません。そんなあいまいさに起因するささいな認識のずれが積もり積もって、大きな問題に発展してしまうケースも少なくないのです」と、従来の方法が施主や設計者、施工者といった関係者間の認識共有や合意形成を難しくする一因になっていると説明。これにともなう手戻りや工程の再調整が、工期、コスト、そして業務負担の増大を招いていました。

画像2: 大成建設株式会社「建設承認メタバース」開発プロジェクト
第1回 建設現場のDXで円滑な合意形成を支援

大成建設株式会社
建築本部
プロジェクト・マネジメント部
電力施設計画室
課長
川瀬 豪 氏

さらに「そうしたリスクを減らそうと建物の一部を実物大で再現することもありますが、時間やコストの問題でかなわず、実際の建物とお客さまのイメージに齟齬(そご)が生じて、結果的に設計や施工をやり直さざるをえないこともあります」と続けるのは、同本部の川瀬 豪氏です。

一方で、建設業界では2000年代から建築物の意匠や構造、設備などに関するデジタルデータを統合したBIM※1の活用が進んできました。建築物を3次元化するBIMは平面図よりも詳細かつ具体的な建築物のイメージを伝えられ、大成建設でも現在手がける大多数のプロジェクトにBIMを導入しています。しかしそれでも、実際の建物との齟齬が完全に解消されるわけではないため、やはり手戻りは避けられませんでした。また、3次元化でデジタルデータを活用しているとはいえ、建設プロジェクトに関わるより広範なデータ連携など業務上でのデジタル化が十分とは言えず、業務効率化という点でも乗り越えるべき課題が残っていました。

没入型の3次元空間でモデル化・プロジェクト情報を一元管理

画像3: 大成建設株式会社「建設承認メタバース」開発プロジェクト
第1回 建設現場のDXで円滑な合意形成を支援

大成建設株式会社
社長室
DX戦略部 DX推進室
データビジネスストラテジスト
池上 晃司 氏

こうしたなか、大成建設ではゲームエンジンを使ってBIMのデータから没入型の3次元仮想空間であるメタバースを半自動で生成するというアイデアを検討。この着想について、DX戦略部DX推進室の池上 晃司氏は「BIMは立体モデルではありますが、没入型ではないため、一人称視点で外構や建物内部の3次元空間を歩けるようなリアルタイム性はありません。高性能な専用マシンに頼らず、オンラインゲームのような手軽さで建物をメタバース化して、あたかもミッションクリアをめざすように空間を探索できないかと考えました」と解説します。

そこで大成建設は、各人のアバターの視点から建物内外の空間を体感できるオンラインアクセス可能なメタバース空間を生成し、さらにその空間内で建設プロジェクトの議事録や意匠、構造、設備仕様の承認プロセスなどに関する種々の情報を集約・一元管理しようと構想。完成形のイメージを発注者、設計者、施工者といった関係者間で共有し、その場で必要な情報・データを参照・提示することで円滑な合意形成を支援し、早期の建設承認を実現したいと考えました。これが、「建設承認メタバース」のビジョンです。

※1 Building Information Modeling

現場のニーズを吸収しながら進化させるアジャイル開発

建設プロジェクトの一連の業務プロセスを効率化するこの新たな「建設承認メタバース」の開発にあたって大成建設が求めたのは、建設関連の情報分野だけでなく、広範なIT領域をカバーする世界水準のデジタル技術でした。そこで同社は、幅広い業界・業種におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)を、グローバルで支援してきた豊富な実績と知見を持つ日立を開発パートナーに選定。2023年1月、株式会社日立コンサルティング(以下、日立コンサルティング)がプロジェクト全体を管理し、日立グループである米国のデジタルエンジニアリングカンパニーGlobalLogicの日本法人GlobalLogic Japan株式会社(以下、GL Japan)が開発を担う「建設承認メタバース―CONSTRUCTION CONTRACT QUEST(略称:C2QUEST)―」開発プロジェクトが始動しました。

画像4: 大成建設株式会社「建設承認メタバース」開発プロジェクト
第1回 建設現場のDXで円滑な合意形成を支援

株式会社 日立製作所
アプリケーションサービス事業部
DXデリバリ推進本部
兼 GlobalLogic Japan
鳴海 寛之

大成建設・日立双方にとって初となる建設承認メタバース開発プロジェクトでは、事前に仕様を策定してから開発を進めるウォーターフォール型ではなく、小さな機能単位で設計・実装、テストを反復しながら完成度を高めていくアジャイル型手法を採用。ユーザーにとっての最適解を求めて、試作とフィードバックを繰り返し、定期的なワークショップを挟んで協議と試行錯誤を重ねる日々が始まりました。「追求しているのは当初の計画にとらわれない“現場志向のアジャイル開発”です。実際にメタバースを使う建設現場からの要望を精緻に把握し、クイックに反応しながら、今も日々その機能を進化させ続けています」と語るのはGL Japanのメンバーとしてプロジェクトに参加する日立の鳴海 寛之です。

画像: 現場のニーズを吸収しながら進化させるアジャイル開発

「第2回 DXで加速する次世代業務スタイルへの変革」はこちら>

大成建設株式会社

[所在地] 東京都新宿区西新宿一丁目25番1号 新宿センタービル
[設 立] 1917年12月28日(創業:1873年10月)
[資本金] 1,227億4,215万8,842円
[事業内容] 日本5大スーパーゼネコンの一角を占める大手総合建設会社。建築・土木の設計・施工をはじめ、環境、エンジニアリング、原子力、都市開発、不動産などに関連した幅広い事業を国内外で展開している。

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他社登録商標
本記事に記載の会社名、商品名、製品名は、それぞれの会社の商標または登録商標です。

お問い合わせ先

株式会社 日立製作所 Lumada お問い合わせ
https://www.hitachi.co.jp/lumada/inq/

株式会社 日立コンサルティング
https://www.hitachiconsulting.co.jp/

関連サイト

次世代の業務スタイルへの変革を推進する「建設承認メタバース™」の開発に着手
https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2023/09/0908.html

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