Hitachi
お問い合わせお問い合わせ
誰も置き去りにすることなく、新たなテクノロジーの力で社会や暮らしを変革していく――地域行政のデジタル化に向けた連携協定のもとでスタートした意欲的な実証は、さまざまな成果を生み出しながら、現在その第2弾が進行中です。2回にわたってこの先進的な取り組みを紹介する連載の初回は、本実証が計画された経緯やそこに活用されるキーテクノロジー、そして実証を通じて得られた種々の知見などについて紹介します。

デジタル技術による地域振興に向けて4者連携協定を締結

画像: デジタル技術による地域振興に向けて4者連携協定を締結

福島県中南部、阿武隈山系の丘陵地から平地にかけて開けた石川郡玉川村は、豊かな自然に恵まれた人口6,000人あまりの村です。同村は「未来(あす)が輝く村づくり、“元気な”たまかわ」というスローガンのもと、行政と村民が一体となって活力に満ちた魅力ある村づくりに取り組んでおり、その一環としてデジタル技術を活用した地域振興を推進しています。

「自治体デジタルトランスフォーメーション(DX)という名のもと、役所での手続きなどにマイナンバーカードを活用するような取り組みは多くの自治体で進んでいます。一方で私たちの関心は、地域住民の方々にどうすれば日々の暮らしのなかでデジタル技術を受け入れてもらえるか、その利用を根づかせていけるか、という点にありました」と語るのは、企画政策課の添田 孝則氏です。

こうしたなか、玉川村は以前から地方創生関連事業などで協力関係にあった三菱HCキャピタル株式会社、株式会社NTTデータ、そして日立とまちづくりや産業、教育などさまざまな分野におけるデジタル化の推進に向けた連携協定を締結。連携事業の第1弾として、2022年7月から約5か月間にわたる「手ぶらキャッシュレス実証事業」を実施することになりました。

日立の独自技術が支える手ぶらで買い物ができるキャッシュレス決済

この実証は、玉川村が発行する「玉川村デジタル地域商品券」を購入し、指静脈を登録した実証参加者が、協力店舗に設置した専用端末に指をかざすだけで買い物ができるというキャッシュレス決済の試み。現金やクレジットカード、さらにはスマートフォンすら必要としない、文字どおり“手ぶら”での買い物を実現します。

本実証を根底から支えるキーテクノロジーとなるのは、日立独自の公開型生体認証基盤PBI(※)です。PBIは生体情報を復元不可能な公開鍵暗号に変換し、登録・照合することで安全で確実な本人認証を実現するセキュリティ基盤。パスワードやICカード、スマートフォンといった管理を要する情報やアイテムが不要なうえ、秘密鍵に変換された生体情報自体は保存されることなく破棄されるため、悪用されるリスクもありません。その安全性の高さや優れた利便性により、店舗での決済や各種施設の入退館管理といった用途への適用がすでに始まっています。

本実証のプロジェクトリーダーを務めた添田氏は「スマートフォンを持っていない高齢者にも抵抗感なく、デジタルの便利さを感じてもらえる面白いアイデアだと思いました」とこの企画に対する第一印象を振り返ります。

※Public Biometrics Infrastructure

毎日の暮らしのなかで感じられる最新デジタル技術の恩恵

利用者500名と村内の小売店10店舗を対象に実施する実証に先立ち、玉川村ではまず、実証参加者や協力店を募集。その後、日立とともに住民の指静脈登録会を開催したり、各協力店に出向いて決済システムの仕組みや専用端末の使い方を説明したりと、さまざまな準備作業に奔走しました。

この準備作業の最初期、村が広報誌を通じて実証を告知したところ、村民からの反響は思いのほか少なかったと言います。「実証に利用される商品券は購入額に対して30%のプレミアムが付与されるもので、以前からかなり人気がありました。そのため指静脈の登録会もかなり混雑するのではと心配していたのですが、初日は想定の3分の1程度の登録に留まり、反応はあまり芳しくありませんでした」と説明するのは、企画政策課の関根 吉博氏です。

しかしその後、協力店や利用登録者の口コミが次第に広がり、ほどなく登録者数は規定の500人に到達。さらに、実証が始まると静脈認証によるキャッシュレス決済はたくさんの登録者から積極的に利用されるようになりました。

また内訳を見ると、当初の想定に反して若い人よりも高齢者の利用回数が多かったと言います。企画政策課の佐久間 充氏は「高齢者はデジタルが苦手だろうと勝手に想像していましたが、実際に使ってみたらその手軽さや便利さを実感してもらえたのでしょう」と考察。例えば、農業が盛んな玉川村では財布を持たずに農作業に行く人も少なからずいるとか。そんな時、のどが渇いたら指一本でさっと冷たい飲み物が買える――といった具合に、日々の暮らしのなかで享受できる新鮮な便利さが村の人々の支持を集めたようです。

多くの支持を集めた“新しい買い物スタイル”の利便性

村にとって意外だったのは、実証期間中に額面の30%のプレミアムが付与される上限額を超えて玉川村デジタル地域商品券を追加購入する人が少なくなかったことです。「つまり、商品券のお得さだけでなく、文字どおり手ぶらで買い物ができる便利なこのスタイルがとても喜ばれたということでしょう」と佐久間氏は言います。

さらにもう1つ、注目したのが村民以外の利用者の存在です。「実証参加者には村民ではない近隣住民の方もいて、その方たちが村の協力店に訪れてキャッシュレス決済で買い物をされるケースも多く見られました」と関根氏が説明するように、本実証は関係人口や交流人口の増加という副産物も玉川村にもたらしたのです。(「後編」へ続く)

→「手ぶらキャッシュレス実証事業」がもたらした“思わぬ効能”や、すでに現在進行中の同実証第2弾について紹介する「後編」はこちらから

お客様プロフィール

福島県玉川村

[所在地] 福島県石川郡玉川村大字小高字中畷9
[人 口] 6,093人(2023年7月1日現在)
[世帯数] 2,142戸(2023年7月1日現在)
[職員数] 70名(2022年4月1日現在)

福島県玉川村のWebサイトへ

他社登録商標
本記事に記載の会社名、商品名、製品名は、それぞれの会社の商標または登録商標です。

お問い合わせ先・情報提供サイト

株式会社 日立製作所 金融システム営業統括本部

お問い合わせは、こちらから

This article is a sponsored article by
''.