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患者やドナーから採取した細胞などを加工して患者に投与する再生医療等製品では、全流通工程にわたる厳格な個体管理と緻(ち)密な情報トレースによる品質の担保が求められています。日立は、再生医療等製品を取り巻く各ステークホルダーが共通的に利用し、バリューチェーン全体での品質情報の統合管理を可能とするサービスをリリースしました。業界標準として広く利用されることをめざし、再生医療の普及・進展に貢献していきます。

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“その人だけのためのくすり”を確実に届けるために

 人の幹細胞などを用いて、病気やけがで失われた組織や臓器を元どおりにすることをめざす再生医療。iPS細胞やES細胞などに代表される幹細胞技術、そしてDNA分析などに用いられるAIや分析技術などの進化を背景に、これまで治療が困難だった難病も根治できる切り札として、近年期待が高まっています。

 再生医療に用いられるのは、患者本人やドナーから採取した細胞や組織に培養などの加工を施した再生医療等製品です。一般的な医療用医薬品は大量生産・在庫を通じて安定的に供給され、多数の患者に処方されます。これに対して、再生医療等製品、特に現在の主流である自家細胞由来の製品は、細胞を採取した本人だけに投与される、いわば「その人だけのためのくすり」です。他の製品では代替できないため、再生医療等製品を間違いなく必要とする患者のもとに届けることは、再生医療の極めて重要なテーマといえます。

 日立は再生医療分野における重要なテーマをITで支援するべく、再生医療におけるバリューチェーン全体の細胞・トレース情報を統合管理するプラットフォーム「Hitachi Value Chain Traceability service for Regenerative Medicine」を構築しました。本プラットフォームは、医療機関、製薬・物流・受託製造企業といったステークホルダーが共通で利用できる国内初(※1)の再生医療等製品の共通サービス基盤として、業務・企業単位の個別システムの垣根を越えたデータの一元管理を実現し、迅速かつ効率的で、安全・安心な再生医療の提供をサポートします。

※1 2020年8月31日現在 日立調べ

経験とソリューションを組み合わせた情報統合化

 再生医療等製品は究極の個人情報ともいえる人の細胞を取り扱うため、その流通にあたっては厳格な品質管理に基づく検体の「個体識別」、そして細胞の採取・生産・輸送・投与作業に関わる複数のステークホルダーを一元的につなぐ「情報トレース」が不可欠となります。

経験・ノウハウに裏づけられた厳格な個体識別

 本プラットフォームでは、患者登録から注文、製造、治療までのプロセス全体にわたって、患者ごとの識別子と生成される組織・細胞・完成品の関連づけが可能です。

独自ソリューションによる高精度な情報トレース

 細胞の採取、生産、輸送、投与などのサプライチェーン上の品質情報をトレースするために、本プラットフォームでは製造業で実績のある日立の「IoTコンパス」(※2)を情報基盤に採用。患者から細胞を採取してから完成品を投与するまでに「誰が」「いつ」「どこで」「どのようなアクションを」実行したかを正確に記録・トレースできます。こうしたデータには個人や業務に関する秘匿性の高い情報が含まれており、厳格な管理が求められます。本プラットフォームでは製品・企業・患者単位で、参加ステークホルダーごとの高セキュリティな管理、また、情報開示範囲の参照権限の制限・制御も可能としています。

※2 独自のデータモデルを用いて生産現場のデータ連携を容易にし、生産工程全体の最適化を支援するソリューション

画像: 独自ソリューションによる高精度な情報トレース

実務に則した知見を結集して高い実用性を協創

 本プラットフォームは、医療用医薬品卸のリーディングカンパニーであるアルフレッサ株式会社(以下、アルフレッサ)をはじめ、再生医療等製品に携わるさまざまなステークホルダーとの協創を通じて、実用性が高いサービスをめざして開発を実施しました。

 例えば、患者の細胞や再生医療等製品の輸送・保管についてはアルフレッサ、治験薬や再生医療等製品の製法開発・製造については受託製造企業、細胞の採取から再生医療等製品の投与に至る全体プロセスや情報のトレースについては製薬企業やバイオベンチャーというように、実務を担う各ステークホルダーの専門的な知見を結集しました。さらに、医療機関で効率的に利用できるようユーザーインタフェースの開発に医療従事者の意見も取り入れていくことで、業界標準として利用できるサービスをめざしていきます。

“One Hitachi”でさらなるQoL向上へ

 新たなビジネス領域となる本プラットフォームの展開にあたり、日立では順次お客さまのニーズに合わせた機能拡張などを検討・実施していく予定です。例えば、細胞採取から投与までの工程全体を見通した分析やシミュレーションの機能を提供することで、さらなる最適化・効率化・生産性向上を支援していきます。また将来的には、各計画の実績に基づいて工程を自動的にスケジューリングする機能を提供するほか、今後は流通に厳格な情報管理が求められる希少疾病治療薬など再生医療等製品以外の他家細胞由来の製品や“スペシャリティ医薬品”への適用拡大や海外展開も推進していく計画です。

 有効な治療法のない難病にも新たな治療の可能性を開く「再生医療」という希望。これからも日立は多岐にわたる社会イノベーション事業をグローバルに展開するグループの総力を結集した“One Hitachi”で、医療・医薬品業界に従事する世界中のお客さまの社会価値・環境価値・経済価値を高めながら、人々のQoL向上に貢献していきます。

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